成長期の背骨のねじれ 姿勢と向き合うために知っておきたいこと

2026年08月31日

横浜市緑区白山にある、はくさん和鍼灸整骨院です。

お子さんの背中を洗ってあげているとき、あるいは制服姿を後ろから見たときに、なんとなく左右のバランスが気になったことはないでしょうか。本人は元気に過ごしていて、痛みも訴えていない。それでも、母親としての感覚が「何かが違う」と静かに告げてくることがあります。今回は、思春期特発性側弯症という背骨のねじれと、成長期の体づくりについて、最近の研究とあわせてお話しします。

側弯症、その名前が示すもの

側弯症とは、背骨が左右にカーブし、ねじれを伴って成長していく状態のことです。とくに思春期に起こるタイプは、はっきりとした原因がひとつに決まっているわけではなく、成長のスピードや骨格の個性が関わっていると考えられています。多くは軽い弯曲にとどまり、大きな支障なく過ごせる方がほとんどです。ただし、まれに成長期のあいだにカーブが進み、専門的な検査や、場合によっては手術という道が検討されることもあります。

なぜ成長期に起こりやすいのか

側弯症にはいくつかの種類がありますが、思春期に発症するものがもっとも多く見られます。身長が一気に伸びる時期は、骨の成長に対して、それを支える筋肉や靭帯の発達がゆっくり追いついてくる時期でもあります。東洋医学の言葉を借りれば、体の器がすばやく広がる一方で、そこを満たす力がまだ十分に行き渡っていない状態、とも言えるかもしれません。統計的には女子に多く見られる傾向があり、進み方にも個人差があります。学校で行われる脊柱側弯症検診も、こうした成長期の変化をとらえるために実施されているものです。

こんな変化に心当たりはありませんか

東洋医学では、体は本来ひとつのまとまりとして働いていると考えます。背骨の左右差も、局所だけの問題として切り離さず、体全体のバランスの表れとして見ていきます。次のような様子に、思い当たることはないでしょうか。

  • 立ち姿を横から見ると、片方の肩だけが前に出ている
  • 服を着せていると、片側の肩甲骨だけがごつごつと当たる
  • ウエストのくびれ方が左右で違う
  • 座っているとすぐに姿勢が崩れて、猫背になりやすい
  • 疲れがたまると片方の肩や腰にだけ重さを感じると本人が言う
  • 呼吸が浅く、深呼吸をしづらそうにしている

これらは単独では判断がつきにくいものですが、いくつか重なって見えるときは、一度体の状態を確認しておくと安心につながります。

ご家庭でできる目安として、お子さんに足をそろえて自然に立ってもらい、後ろから肩の高さ、肩甲骨の出っぱり方、腰のくびれの左右差を眺めてみてください。続けて、両手を合わせるようにゆっくりと前屈してもらい、背中を横から見て片側だけが盛り上がっていないかを確認します。明るい部屋で、無地に近い服のときに見ると、変化に気づきやすくなります。

研究から見えてきたこと

2026年、ヨーロピアン・スパイン・ジャーナル誌に、思春期特発性側弯症の手術を控えた子どもたちに対する運動介入をまとめたシステマティックレビューが発表されました。この研究では、手術の前にあらかじめ体力や呼吸機能を高める運動に取り組んだグループのほうが、手術後の体の戻りが良い傾向にあったことが整理されています。手術を待つあいだをただ静かに過ごすのではなく、体を整える時間として使うことの意味が示唆された報告といえます。

この知見は手術を予定する子どもたちを対象にしたものですが、私たちが東洋医学の視点で受け取りたいのは「変化が起こる前から、体の土台を整えておく」という考え方そのものです。気血のめぐりを大切にする東洋医学でも、症状が出てから対応するより、日頃から体の声に耳を傾けておくことを重んじてきました。

なお、レビューをまとめた著者たちは、対象となった研究がまだ数・規模ともに限られており、どのくらいの期間・内容の運動が望ましいかは今後の研究課題であるとも述べています。ひとつの報告だけを絶対視せず、「事前の備えには意味がありそうだ」という方向性として、ゆるやかに受け止めていただければと思います。

日常の姿勢と生活習慣

成長期の子どもは骨や関節がやわらかく、日々の姿勢のクセが体の使い方に影響しやすい時期です。片方の肩にだけカバンをかける、いつも同じ方向を向いてテレビを見る、スマートフォンを覗き込む姿勢が長く続く。こうした積み重ねは、側弯症そのものの直接的な原因と断定できるものではありませんが、体の使い方の癖として、姿勢バランスに影響を与えると考えられています。

呼吸の浅さも見逃せないポイントです。緊張や姿勢の崩れが続くと、胸まわりが硬くなり、呼吸が浅くなりがちです。深い呼吸ができているかどうかは、体全体のめぐりを保つうえでも大切な指標のひとつです。

そのままにしておくと起こりうること

軽度の側弯であれば、日常生活への影響は限られていることが多いです。しかし、成長期にカーブが進行すると、見た目の左右差だけでなく、呼吸のしにくさや、体幹を支える力の低下につながることがあります。大人になってから、慢性的な肩や腰の重だるさとして残ってしまう方がいることも報告されています。早めに体の状態と向き合っておくことは、その後の選択肢を広げることに通じます。東洋医学では、大きな不調として表れる前の小さな偏りに気づき、整えておくことを「未病」への向き合い方として大切にしてきました。側弯症についても、同じような心構えで日々の体と付き合っていただければと思います。

はくさん和鍼灸整骨院での向き合い方

当院では、まずお子さんの立ち姿を丁寧に観察するところから始めます。肩や肩甲骨、骨盤の高さの左右差、前屈したときの背中の盛り上がり、呼吸の深さや胸郭の動きやすさなどを確認し、体全体のバランスとしてお伝えします。そのうえで、手技によって背中まわりの緊張をやわらげたり、呼吸がしやすくなるよう胸まわりの動きを引き出したりするアプローチを行います。ご希望があれば鍼灸によるケアも取り入れながら、ご家庭でできる簡単なストレッチもあわせてお伝えしています。

「鍼灸で側弯そのものが改善しますか」というご質問をいただくこともあります。鍼灸や手技は、背中まわりの緊張をやわらげたり、呼吸をしやすくしたりする助けになると考えていますが、骨のカーブの角度そのものへの影響は、お子さんごとの状態によって異なります。過度な期待を寄せるのではなく、まずは体の状態を丁寧に見ていくことを大切にしています。

なお、背骨のカーブの角度そのものを判断するには画像検査が必要です。当院での確認は姿勢や体の使い方の範囲にとどまりますので、進行が気になる場合は整形外科の受診をおすすめしています。※状態によっては医療機関での検査をおすすめする場合もあります。

気になったら、まずお話を聞かせてください

「気のせいかもしれない」と思いながらも、心のどこかで引っかかっている。そんな感覚を抱えている保護者の方は少なくありません。学校での指摘の有無にかかわらず、少しでも気になることがあれば、どうぞそのままお話しください。お子さんの体の状態を一緒に見つめ、できることから整理していきます。

お子さんご自身が「なんとなく背中が重い」「長く座っていると疲れる」といった感覚を話してくれることもあります。本人にとっては言葉にしづらい違和感であることも多いので、責めるような聞き方にならないよう、日常の会話のなかでそっと様子をうかがっていただければと思います。

まとめ

思春期特発性側弯症は、痛みを伴わないまま静かに進むことがあるからこそ、周囲の気づきが大きな意味を持ちます。今回ご紹介した研究は、体をあらかじめ整えておくことの価値を教えてくれるものでした。日々の姿勢や呼吸の状態に目を向け、気になったときは早めに相談する。そうした積み重ねが、お子さんの体を長い目で守ることにつながると考えています。

参考文献

Tam TH, et al. “Prehabilitation & preoperative exercise in adolescent idiopathic scoliosis surgery: a systematic review.” European Spine Journal, 2026. PMID: 42053791. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42053791/

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