肩の骨折後 ── 上腕骨近位部骨折と、巡りを取り戻す手技・鍼灸の話

2026年06月8日

横浜市緑区白山にある、はくさん和鍼灸整骨院です。

「骨はくっついたはずなのに、肩が重くて動かない」「固定が外れてからも、なんとなく身体全体がだるい」「肩のあたりが固まった感じが続いている」──そのようなお身体の声を抱えたまま、何か月も過ごしていらっしゃる方がいます。骨折は「骨が癒合すればゴール」ではありません。骨の周囲にある筋肉・筋膜・血管・神経など、すべてが連動しながら「巡り」を取り戻していくプロセスこそが、本当の意味での回復といえます。

今回は、特に中高年の女性に多く見られる「上腕骨近位部骨折(肩の付け根の骨折)」について、身体全体の調和という視点と、最新の研究知見をあわせてお伝えします。

上腕骨近位部骨折とは?

上腕骨近位部骨折とは、肩関節のすぐ下にある上腕骨の上端部分に起こる骨折です。転倒して手をついたり、肩に直接衝撃が加わったりすることで起こりやすく、50〜70代の女性に多いとされています。

骨粗しょう症による骨密度の低下がある場合には、軽い転倒でも骨折することがあります。骨のずれが小さい安定型骨折であれば、手術をせずに三角巾などで固定しながら保存的に対応するケースも多く、その後のリハビリがどう進むかが大きな鍵を握ります。

東洋医学的な視点からは、こうした固定の期間に「気血の流れが滞りやすい」状態が生まれると考えます。動かせない部位には血流が届きにくくなり、滞りが続くほど組織が硬くなり、回復に時間がかかるようになります。

よく見られる症状・特徴

骨折後にお身体が訴えるサインとして、以下のようなものがあります。

  • 肩の付け根から腕にかけての重だるさ・痛み
  • 腕を上げようとしたときの「ひっかかり」のような感覚
  • 肩周辺の腫れや熱感(急性期)
  • 時間が経つにつれ肩が「固まっていく」感覚
  • 肩甲骨・首・背中まで重さや張りが広がってくる

これらは単なる「肩が動かない」という機能的な問題だけでなく、身体全体の巡りが止まっているサインかもしれません。特に、骨折後に長期間じっとしていることで、肩だけでなく全身の流れが落ちてしまうことがあります。そのような状態を「身体が整えてほしいと語りかけている」と、当院では捉えています。

原因として考えられる状態(研究の知見から)

2024年に発表された系統的レビュー(Ranieri R ら、European Review for Medical and Pharmacological Sciences)では、上腕骨近位部骨折の保存的治療において、骨折後1週間以内からリハビリを開始したグループと、固定を長く続けたグループとの比較が行われました。

早期から関節の動きを促すアプローチを取り入れたグループでは、骨折後数か月の段階において痛みの軽減・肩の機能回復において良好な傾向が示されました。また、骨の癒合に対して早期の動きが悪影響を与えるという結果は確認されなかったことも、重要な知見として報告されています。

これは東洋医学の考え方とも通じるところがあります。「動かすことで気血が巡り、巡りが回復を促す」──現代の研究が、身体の理にも通じる可能性を示している点は、とても興味深いと感じます。ただし骨折の状態・ずれの程度・年齢によって最適なアプローチは異なります。担当医の指示のもとで進めることが大切です。

姿勢や生活習慣が「巡り」に与える影響

東洋医学では、姿勢の乱れは「気の滞り」を生むと考えます。長年の猫背や巻き肩が続いていると、肩甲骨周囲の筋肉が緊張し、肩関節への血流・リンパの流れが低下しやすい状態になります。

このような状態が続いていると、骨折後の回復がよりゆっくりになることがあります。また、転倒リスクの観点からも、姿勢の乱れは重心バランスを不安定にし、再受傷の引き金になることもあります。

日頃から「身体を温める」「よく動かす」「適切な休息をとる」という習慣が、骨折後の回復の土台にもなります。お身体の重さや硬さに気づいたときに、早めにケアする習慣が、長い目で見た健やかさにつながると当院では考えています。

※状態によっては医療機関での検査をおすすめする場合もあります。

放置によって起こりうる影響

骨折後に適切なケアをしないまま過ごすと、身体にはさまざまな変化が起こる可能性があります。

  • 肩関節の「拘縮」──関節を包む組織が固まり、動ける範囲が慢性的に制限される
  • 肩周辺の筋肉の萎縮・衰え
  • 慢性的な肩・首・背中への痛みや重さの波及
  • 着替え・洗髪・家事などの日常動作への支障
  • 全身の活動量の低下・気力の低下

東洋医学的な視点では、一か所の滞りが放置されると、それが他の部位へと波及すると考えます。肩の不調が首・背中・腕全体へと広がる前に、早めに身体を整えることが大切です。

当院で行っている対応

はくさん和鍼灸整骨院では、骨折後の回復に向けた施術を、現代医学的な解剖学の知識と東洋医学的な視点の両面から行っています。

身体の状態を丁寧に確認する

まず肩の可動域・痛みの部位・身体全体の状態について聞き取りを行います。どこに「滞り」を感じているか、どのような生活上の支障があるかを一緒に確認します。

手技的なアプローチ(施術)

  • 肩関節周囲の硬さに対して、緊張を緩めるような手技を組み合わせます
  • 肩甲骨・背中・首にかけての筋肉のほぐしを通じて、全体的な「巡り」を取り戻すアプローチを行います
  • 鍼灸施術との組み合わせも可能で、固まった組織に働きかけるアプローチも提案しています

日常生活でのアドバイス

  • 身体を温めて巡りを促す習慣の提案(入浴・ホットパックなど)
  • 日常動作での肩の使い方・注意点
  • 無理なく続けられるセルフケアの確認

こんな方は一度ご相談ください

  • 骨折後のケアを、東洋医学的な視点も含めて受けたい方
  • 肩が「固まっている感じ」がなかなか変わらないと感じている方
  • 骨は問題ないと言われたが、肩の重さや動きにくさが続いている方
  • 鍼灸とのケアも合わせて検討したい方
  • 身体全体の「巡り」を整えながら、肩の回復をサポートしてほしい方

まとめ

肩の骨折後に感じる「固まり」「重だるさ」「動かしにくさ」は、身体が整えてほしいというサインかもしれません。2024年の系統的レビューが示すように、骨折後に早期から適切な動きを促すアプローチを取り入れることは、拘縮の予防や機能回復において意味のある選択肢として考えられています。

はくさん和鍼灸整骨院では、手技と鍼灸を組み合わせた施術で、肩の骨折後の身体の「巡り」を整えるサポートを行っています。お身体の声に耳を傾けながら、回復の歩みを一緒に考えさせてください。ご相談をお待ちしています。


参考文献

Ranieri R, Lacouture-Suarez JD, Ferrero M, Longobardi V, Cacace F, Ferrero A, Bertolino EM, Kon E, Lipina M, Lychagin A, Di Matteo B, Castagna A. “Early rehabilitation vs. conventional immobilization in nonoperative treatment of proximal humeral fracture: a systematic review.” European Review for Medical and Pharmacological Sciences, 2024 Jun. URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38884512/

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