手をついて転んだ夜、手首の芯にじんわり残る痛み
2026年09月4日
横浜市緑区白山にある、はくさん和鍼灸整骨院です。
夕方、買い物帰りの坂道でふと足を滑らせ、とっさに手をついた。そのときは驚きで痛みに気づかず、家に帰ってから手首がじんわりと熱を持ってきた——そんな経験をされた方はいらっしゃいませんか。今回は、手首の骨折のなかでも起こりやすい「橈骨遠位端骨折」について、身体全体の巡りという視点も交えながらお話ししていきます。
手首を骨折するということ ー 身体に起きていること
橈骨遠位端骨折は、前腕にある橈骨の、手首に近い部分が折れてしまう状態です。転んだ拍子にとっさに手をついてしまい、その衝撃が一点に集まることで起こります。特に更年期以降の女性や、日頃から冷えを感じやすい方、足腰の踏ん張りが利きにくくなってきた方に多く見られます。
東洋医学では、身体を支える力や踏ん張る力は「腎」の働きと深く結びついていると考えられてきました。加齢とともにこの働きがゆるやかに落ち着いてくると、バランスを崩したときにとっさに身をかばう力も弱まりやすく、結果として手首に負担が集中してしまうのです。買い物帰りの坂道だけでなく、朝の身支度で靴下を履こうとして片足立ちになった瞬間にふらついてしまうことも、実はよくあるきっかけのひとつです。冷えによって足先の感覚が鈍くなっている時期は、こうした些細な動作でも踏ん張りが利きにくくなるといわれています。
こんな痛みや違和感はありませんか
- 転んだ後、手首を動かすとズキッとした痛みが走る
- 手首のまわりがぽってりと腫れ、色が変わってきた
- 手首の形がいつもと違い、少し曲がって見える
- 瓶のふたやペットボトルのキャップが開けづらい
- 手をついて体を支えようとすると力が入らない
- 冷えると患部のあたりがじんわりと重たく感じる
こうした様子がある場合、ご自身では軽い捻挫だと判断されることもありますが、痛みや腫れが強いときは骨折の可能性を考え、早めに検査を受けていただくことをおすすめします。※状態によっては医療機関での検査をおすすめする場合もあります。
ギプスか手術か、その先にある研究データ
橈骨遠位端骨折への対応は、大きく分けてギプスによる保存療法と、プレートで固定する手術療法のふたつがあります。どちらがよいのか、長らくはっきりとした答えはありませんでした。
2024年にAlanaziらのグループが発表したシステマティックレビュー・メタ解析では、65歳以上の患者を対象とした13件のランダム化比較試験、合計2400名分の記録が統合されています。その結果、受傷から1年後の手首の働き、握る力、痛みの程度において、手術と保存療法のあいだに臨床的に意味のある差はほとんど見られなかったと報告されました。統合された研究の対象や骨折の状態にはばらつきがあるとはいえ、身体への負担が大きい手術を選ばなくても、ギプスによる保存的な向き合い方で、暮らしに必要な動きを取り戻していける可能性があるということです。
身体の巡りと回復力の関係
骨折した箇所だけを見ていると、どうしても「そこだけの問題」だと捉えがちです。ですが東洋医学の考え方では、気血の巡りが滞ると、患部だけでなく身体全体の回復のペースにも影響が出ると考えられています。手首をかばって腕全体を動かさない期間が続くと、肩や首まわりの動きも鈍くなり、こわばりや重だるさとして現れることがあります。
当院では、手首そのものへのアプローチだけでなく、腕や肩、背中にかけての緊張をゆるめ、身体全体の巡りを整えることを大切にしています。鍼による刺激も、こわばった筋肉をゆるめ、血行を促す手段のひとつとして取り入れています。冷えを感じやすい方には、患部を締め付けすぎない程度に温める工夫もあわせてお伝えしています。
冷えや姿勢の乱れが経過に影響することも
手首を骨折したあと、無意識にかばう姿勢が続くと、肩が上がったまま固まってしまったり、猫背が強まったりすることがあります。姿勢の乱れは全身の血行を妨げやすく、冷え性の方であればなおさら、患部周辺の血行が滞りやすくなります。
キッチンで洗い物をする、洗濯物を干す、布団を上げ下げする——こうした家事の場面でも、片手ばかりをかばう癖がついてしまうと、反対側の肩や腰に余計な負担がかかります。手先だけでなく、身体全体の使い方を見直すことが、経過をゆるやかに後押ししてくれます。湯船にゆっくり浸かって腕全体を温める時間をつくることも、こわばりをやわらげる助けになります。
回復を後押しする毎日の習慣
ギプスをしている期間も、指先を軽く動かす、肘や肩をゆっくり回すといった、痛みのない範囲での小さな動きは続けていただきたいところです。じっと固定したままでいると、手首だけでなく腕全体の動きが硬くなり、あとから動かしづらさが増してしまうことがあります。
湯たんぽで足元を温める、白湯を飲む習慣をつくるなど、身体を冷やさない工夫も、この時期には支えになります。とくに冬場や梅雨時など気温や湿度が変わりやすい季節は、古傷やこわばりを感じやすいという声もよく耳にします。無理のない範囲で、ご自身の体調の変化に耳を傾けていただければと思います。
放っておくとどうなるか
痛みが落ち着いたからと自己判断で放置してしまうと、骨が本来の位置からずれたまま固まってしまう「変形癒合」につながることがあります。そうなると手首の動く範囲が狭くなったり、握る力が戻りにくくなったりして、タオルを絞る、重い鍋を持ち上げるといった日々の動作がしづらくなることもあります。
また、かばう期間が長引くほど、肩や首まわりのこわばりも根深くなっていきます。骨そのものの経過は医療機関にお任せする部分ですが、そのまわりの巡りを整え、動きを取り戻していくプロセスは、私たちがお手伝いできることのひとつです。
はくさん和鍼灸整骨院でのケア
当院ではまず、手首の動き、握る力、痛みが出る動作をひとつずつ確認させていただきます。そのうえで、手技によって腕や肩まわりの緊張をゆるめ、必要に応じて鍼灸によるアプローチも組み合わせながら、身体全体のバランスを整えていきます。
冷えを感じやすい方には、日常でできる温め方や、負担をかけにくい家事の手順についても、お一人おひとりの生活に合わせてお伝えしています。季節の変わり目で体調を崩しやすい方には、手首まわり以外のお悩みもあわせてお伺いすることがあります。
白山・十日市場周辺にお住まいの方はもちろん、遠方から通われている患者さまも多く、皆さまそれぞれのペースに合わせて施術内容を調整するようにしています。骨折後は不安な気持ちになりやすい時期でもあるため、身体のことだけでなく、日々のちょっとした心配事もお話しいただけたらと思います。
ご相談ください
「これくらいの違和感で相談してよいのだろうか」と迷われる方も少なくありませんが、早めにお身体の状態を確認しておくことで、その後の回復のペースも変わってきます。ギプスが外れたあとの動かしにくさや、なんとなく続く重だるさを感じている方は、どうぞお気軽にお声がけください。ご家族に付き添っていただいてのご来院や、施術中の細かなご要望も遠慮なくお申し付けください。
おわりに
橈骨遠位端骨折は、ちょっとした転倒がきっかけで誰にでも起こりうるものです。今回ご紹介した研究のように、手術と保存療法とのあいだで1年後の機能に大きな差がないという知見は、ご自身の身体とじっくり向き合う時間を持つうえでの支えになるかもしれません。焦らず、季節や体調に合わせながら少しずつ動きを取り戻していくことが、長い目で見た近道になることもあります。手首まわりの状態や身体全体の調子が気になる方は、はくさん和鍼灸整骨院までご相談ください。
参考文献
Alanazi AA, et al.「Surgical vs. Conservative Treatment of Distal Radius Fractures in the Elderly: A Systematic Review and Meta-Analysis」Cureus. 2024;16(12):e75879. doi:10.7759/cureus.75879



