股関節の奥の「つまり」は、身体が整えてほしいサインかもしれません ── 股関節インピンジメント症候群と、巡りを取り戻す手技・鍼灸のはなし

2026年08月14日

横浜市緑区白山にある、はくさん和鍼灸整骨院です。「しゃがむと股関節の前が挟まるような感じがする」「なんとなく股関節の奥が重く、動きにくい」「靴下を履くときに股関節がひっかかる」——そんな身体の声に、心当たりはありませんか。忙しい毎日の中では、こうした小さな違和感はつい後回しにされがちです。今日は、股関節の奥に生じやすい「股関節インピンジメント症候群」という状態について、東洋医学的な視点も交えながらお話ししていきます。

股関節インピンジメント症候群とは

股関節インピンジメント症候群(FAI)とは、大腿骨と骨盤の骨の形の組み合わせによって、股関節を深く曲げる・ひねるといった動作の際に、関節の中でぶつかり合いが生じやすくなっている状態のことです。西洋医学的には骨の形状の個人差として説明されますが、東洋医学の視点で見ると、股関節まわりの「気血の巡り」が滞ることで、関節本来の動きが発揮されにくくなっている状態、と捉えることもできます。骨の形は生まれ持った特徴であっても、その周りの巡りやしなやかさは、日々のケアによって変化していくものだと私たちは考えています。

よく見られる症状

  • しゃがみ込みで股関節の前側に挟まるような感覚がある
  • 歩いたあと、股関節の奥にじんわりとした重だるさが残る
  • 靴下を履く、車に乗り込むといった深く曲げる動作でひっかかりを感じる
  • 股関節をひねる動きで違和感や詰まり感がある
  • 疲れが溜まると股関節まわりが特に重く感じる
  • 冷えとともに股関節の動きが硬くなったように感じる

こうしたサインは、身体が「そろそろ整えてほしい」と発しているメッセージなのかもしれません。

原因として考えられる状態

骨の形の特徴に加えて、股関節まわりの筋肉や筋膜の巡りが悪くなり、こわばりが生じることで、関節の動きのバランスが崩れやすくなっている状態も一因と考えられています。東洋医学では、股関節は下半身の気血が集まりやすい要所のひとつとされ、ここでの巡りの滞りが「詰まり感」として身体に現れることがあるとも言われています。冷えやストレス、疲労の蓄積も、巡りを滞らせる要因のひとつとして捉えられています。

興味深いことに、2025年にBone & Joint Open誌に発表された研究(Ramadanov氏らによるシステマティックレビュー)では、FAIのある方1,799例を対象とした21件のランダム化比較試験を統合し、リハビリテーションなどの保存的なアプローチと、手術(股関節鏡)とを比較しています。その結果、手術を受けたグループのスコアは統計的にはやや優れていたものの、その差は「臨床的に意味のある変化」とされる基準には届かなかったと報告されています。この結果は、身体の巡りを整えていく保存的なケアにも、じゅうぶんに向き合う価値があることを示しているように思います。西洋医学的な数値だけでなく、ご自身の身体の実感を大切にするという考え方にも通じるものがあります。

この研究は手術という選択肢を否定するものではありません。症状の程度や骨の形の特徴によっては、手術という道が身体に合っている場合もあります。大切なのは、数値やスコアだけで判断するのではなく、ご自身の身体の声に耳を傾けながら、いま合っているケアの形を選んでいくことだと私たちは考えています。

姿勢や生活習慣の影響

長時間座りっぱなしの生活や、股関節をあまり大きく動かさない毎日は、股関節まわりの気血の巡りを滞らせやすくします。また、片脚に重心をかけるクセや骨盤の傾きも、股関節にかかる負担の偏りとなり、身体のバランスを崩す一因になり得ます。冷房で身体が冷えやすい時期や、疲労が蓄積しやすい時期にも、股関節まわりの巡りは滞りやすくなる傾向があります。身体は、こうした偏りを「詰まり」や「重だるさ」というかたちで、少しずつサインとして発してくれているのかもしれません。

放置によって起こりうる影響

股関節の詰まり感をそのままにしておくと、その部分をかばう動きが癖になり、腰や膝など、離れた場所にも負担が波及していくことがあります。また、巡りの滞りが長引くことで、股関節まわりの筋肉のこわばりがさらに強まり、身体全体の調和が崩れやすくなってしまうケースも見られます。※状態によっては医療機関での検査をおすすめする場合もありますので、痛みが強い、または急に悪化したと感じる場合は、無理をせずご相談ください。

当院で行っている対応

はくさん和鍼灸整骨院では、まず股関節の動きや全身のバランスをじっくりと確認し、どこに巡りの滞りが生じているのかを見極めていきます。そのうえで、股関節まわりの筋肉や関節包へアプローチする手技と、鍼灸による気血の巡りを促すケアを組み合わせ、身体全体を整えていくことを大切にしています。動きのクセや生活習慣、冷えの状態についてもお話をうかがいながら、日々の中で無理なく続けられる過ごし方を一緒に考えていきます。

当院での施術の流れ

初めてお越しいただく際は、まず股関節の状態だけでなく、冷えや疲労、睡眠の状態など全身のコンディションについてもゆっくりお伺いします。そのうえで股関節まわりの動きを確認し、巡りの滞りが強い部位を見極めながら、手技と鍼灸を組み合わせた施術を行っていきます。施術後は身体の変化をご自身で感じていただきながら、ご家庭でできる温めのケアや過ごし方についてもお伝えし、少しずつ巡りの良い状態を取り戻していけるようサポートいたします。

よくいただくご質問

「骨の形が原因なら、手技や鍼灸を受けても意味がないのでは」というお声をいただくことがあります。たしかに骨そのものの形を変えることはできませんが、その周りの筋肉や筋膜の巡り、関節を支えるバランスは、日々のケアによって変化していく部分です。東洋医学では、身体を「部分」ではなく「全体のつながり」として捉えます。股関節だけでなく、骨盤・腰・下肢全体の巡りを見ながらアプローチすることで、詰まり感の出にくい状態を目指していくことができると考えています。

こんな方は一度ご相談ください

  • 股関節の奥にじわじわとした重さ・詰まり感が続いている方
  • しゃがむ・深く曲げる動作にひっかかりを感じる方
  • 冷えや疲労とともに股関節の動きにくさを感じやすい方
  • 身体の巡りを整えながら、股関節の状態と向き合いたい方
  • 手技と鍼灸、両方のアプローチに興味がある方

ご自宅でできる巡りのケア

施術と施術の間の過ごし方も、巡りを保つうえで大切な時間です。股関節まわりを軽く回す、湯船で温めながら脚の付け根をやさしくさするなど、ご自宅でも無理なく取り入れられる工夫をお伝えしています。「頑張りすぎない」ことも巡りを整えるうえでは大切な考え方で、心地よいと感じる範囲でゆっくり続けていただくことをおすすめしています。

季節と股関節の巡り

東洋医学では、冷えは巡りの大敵とされています。特に気温の変化が大きい季節の変わり目や、冷房で身体が冷えやすい時期には、股関節まわりの筋肉がこわばりやすく、詰まり感を自覚しやすくなる方も少なくありません。日頃から股関節まわりを冷やさないよう心がけ、湯船にゆっくり浸かって身体を温める習慣を持つことも、巡りを整えるうえでの助けになると考えられています。

まとめ

股関節インピンジメント症候群は、骨の形だけでなく、股関節まわりの巡りやバランスとも関わりのある状態と考えられます。身体が発する小さなサインに耳を傾け、巡りを整えていくことが、股関節と長く付き合っていくための土台になります。気になる違和感がある方は、どうぞお気軽にお声がけください。

参考文献

  • Ramadanov N, Lettner J, Voss M, Hable R, Prill R, Dimitrov D, Becker R.「Conservative treatment versus hip arthroscopy in patients with femoroacetabular impingement: a multilevel meta-analysis of randomized controlled trials」Bone & Joint Open. 2025.

URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40262760/

関連記事