座ったときにお尻の奥に感じる鈍い痛みは、身体が「整えてほしい」というサインかもしれません──近位ハムストリング腱症と、巡りを取り戻す手技・鍼灸のはなし
2026年08月17日
横浜市緑区白山にある、はくさん和鍼灸整骨院です。
椅子に腰かけているあいだ、お尻の奥のほうにじんわりとした鈍さを感じる。立ち上がる瞬間、座骨のあたりにピリッとした痛みが走る。そんな感覚を、疲れのせいだと思ってなんとなくやり過ごしてはいないでしょうか。身体は、無理を重ねたときに小さなサインを送ってくれています。今回は、そうしたサインの背景にあることの多い「近位ハムストリング腱症」について、東洋医学的な視点と最新の研究知見をあわせてお話ししていきます。
近位ハムストリング腱症とは
太もも裏側の筋肉群であるハムストリングは、骨盤の下にある座骨結節という骨に、腱というかたちで根を張るように付着しています。近位ハムストリング腱症とは、この座骨結節のあたりでハムストリングの腱に負担が積み重なり、腱の状態そのものに変化が起きて、痛みや違和感として現れてくるものを指します。
東洋医学の考え方では、身体は気・血・水がスムーズに巡ることで健やかさが保たれるとされます。これらの巡りのどこかが滞ると、その部分に痛みやこわばりといった形でサインが表れやすくなると考えられています。座りっぱなしの姿勢が続いたり、股関節まわりの動きが乏しくなったりすると、その部分の巡りが滞りやすくなり、腱や筋肉に「重さ」「こわばり」として現れてくることがあります。近位ハムストリング腱症も、まさにそうした巡りの滞りが座骨まわりに表れたサインの一つと捉えることができるかもしれません。
よく見られる症状・特徴
- 長く座っていると、座骨の下あたりにじんわりとした鈍痛が広がる
- 座った姿勢から立ち上がる瞬間に、ピリッとした痛みが走る
- 走る、脚を後ろに蹴り出すといった動作で、太もも裏の付け根が重だるくなる
- 坂道や階段でお尻の下に突っ張るような感覚が出る
- 朝の一歩目に、こわばりのようなものを感じる
- 前屈やストレッチをすると、座骨のあたりに響くような痛みがある
- 長時間の移動のあと、座っていた側だけ重だるさが抜けにくい
これらのサインは、身体が「そろそろ整えてほしい」と伝えてくれている合図かもしれません。一つひとつは些細に感じられても、積み重なることで身体の巡り全体に影響を及ぼしていくことがあります。
原因として考えられる状態
2023年に発表された系統的レビュー(Dizon P, Jeanfavre M, Leff G, Norton R.「Comparison of Conservative Interventions for Proximal Hamstring Tendinopathy: A Systematic Review & Recommendations for Rehabilitation」Sports. 2023)では、近位ハムストリング腱症に対する保存的なケアについて、複数の研究知見がまとめられています。
この報告では、股関節を約110度、膝を45〜90度ほど曲げた姿勢で行う、少しずつ負荷を高めていく運動が、症状の変化に関わる可能性のあるアプローチとして紹介されています。急に強い刺激を与えるのではなく、身体が受け止められる範囲で少しずつ働きかけていくという考え方は、東洋医学における「整える」というアプローチとも通じるものがあります。
また同レビューでは、体外衝撃波、超音波、トリガーポイントへの鍼、器具を用いた軟部組織への働きかけなど、いくつかの手法を組み合わせて対応している研究も紹介されています。鍼灸の観点からみても、座骨まわりに滞った巡りへ複数の角度からアプローチしていくことは、身体全体の調和を取り戻すうえで理にかなっていると考えられます。
東洋医学では、下半身の巡りは腎や肝の働きとも関わりが深いとされ、座骨まわりの重だるさは単なる局所の問題ではなく、身体全体のバランスの乱れが表れた結果として捉えることもあります。局所の腱だけを見るのではなく、股関節から骨盤、腰、さらには足先までのつながりを一つの流れとして見立てていくことが、はくさん和鍼灸整骨院の大切にしている考え方です。
姿勢や生活習慣の影響
長時間の座位姿勢は、座骨結節まわりのハムストリング腱を圧迫し続け、その部分の血の巡りを滞らせやすくします。股関節まわりの柔軟性が乏しくなっていたり、体幹の軸が安定していなかったりすると、身体は無意識のうちに座骨まわりへ負担を寄せてしまうことがあります。脚を組む癖、骨盤が後ろに傾いた姿勢での座り方、冷えやすい環境での長時間のデスクワークなども、巡りの偏りにつながりやすい生活習慣の一つといえるでしょう。日々の何気ない姿勢の積み重ねが、身体の声となって現れてきます。忙しい毎日のなかでは、こうした小さなサインに気づきにくいものですが、身体は着実にその変化を記録しています。
放置によって起こりうる影響
違和感をそのままにして日々を過ごしていると、身体は痛む部分をかばうように、無意識に姿勢や動き方を変化させていきます。すると、股関節や腰、反対側の脚など、離れた部位にまで負担が波及していくことがあります。巡りの滞りは一箇所にとどまらず、身体全体のバランスに影響を及ぼしていくものと考えられており、早い段階で身体の声に耳を傾け、整えていくことが望ましいといえます。我慢強くやり過ごすほど、身体が本来の巡りを取り戻すまでに時間がかかってしまうことも少なくありません。※状態によっては医療機関での検査をおすすめする場合もあります。
当院で行っている対応
はくさん和鍼灸整骨院では、まず座っているとき・歩いているとき・股関節を動かしたときの痛みの感じ方を丁寧にお伺いし、股関節や骨盤まわりの動きの調和を確認していきます。しゃがみ込みや前屈の際の張り感、片脚立ちでの安定感なども合わせて見ながら、巡りが滞っている部分を探っていきます。お一人おひとりの体質や、冷え・むくみといった日頃の身体の傾向もあわせてお伺いし、座骨まわりだけでなく身体全体の巡りの状態を見立てていきます。
そのうえで、鍼灸と手技を組み合わせながら、座骨まわりや股関節、骨盤にたまった巡りの滞りへアプローチしていきます。経絡の流れも意識しながら、局所だけでなく身体全体のバランスを整えることを心がけています。あわせて、日常生活で意識していただきたい座り方や、股関節の動かし方、ご自宅でできる簡単なセルフケアについてもお伝えし、少しずつ身体本来の調和を取り戻していけるようサポートしています。
こんな方は一度ご相談ください
- 座っていると座骨の下あたりに鈍い痛みが出る方
- 立ち上がる瞬間の痛みが続いている方
- 走る、階段を上る動作で太もも裏の付け根が重だるくなる方
- ストレッチのときに座骨のあたりに響く感覚がある方
- 身体の巡りを整えながら、根本から向き合っていきたい方
- 冷えやすい、疲れが抜けにくいなど、身体全体の調子とあわせて相談したい方
- 湿布や自己流のストレッチを試しても、座るとまた同じ違和感が戻ってくる方
身体からのサインを見過ごさず、お早めにご相談ください。お一人おひとりのお身体と向き合いながら、丁寧にお話を伺ってまいります。
まとめ
近位ハムストリング腱症は、座骨まわりの腱に現れる、身体の巡りの滞りのサインの一つと捉えることができます。鍼灸と手技を組み合わせながら、股関節から骨盤、腰までのつながりを整えていくことで、日々の過ごし方や身体の使い方そのものが少しずつ変わってくるかもしれません。座ったときの違和感を我慢せず、身体の声に耳を傾けてみませんか。おひとりおひとりの体質やお悩みに合わせて、じっくりと向き合ってまいります。ご不安なことがあれば、どうぞはくさん和鍼灸整骨院へお気軽にご相談ください。
参考文献
Dizon P, Jeanfavre M, Leff G, Norton R.「Comparison of Conservative Interventions for Proximal Hamstring Tendinopathy: A Systematic Review & Recommendations for Rehabilitation」Sports (Basel). 2023.
URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36976939/ (PMID: 36976939)



