ポリヴェーガル理論:身体から読み解く自律神経
2024年07月3日
ポリヴェーガル理論は、神経科学者スティーブン・ポージェス博士によって提唱された理論であり、私たちの自律神経系(ANS)がどのようにして感情、社会的行動、ストレス反応に影響を与えるかを説明しています。この理論は、特に心理療法や自律神経施術の分野で注目されています。
はくさん和鍼灸整骨院の自律神経アプローチにも一部応用されている理論です。
自律神経とは?
まず自律神経とは何かを簡単に説明します。
自律神経とは、交感神経と副交感神経の2種類があり、簡単に言えば交感神経は精神的なアクセル(緊急事態に対応する、戦う、逃げる、バリバリ集中して何かをする)、副交感神経は精神的なブレーキ(休む、睡眠、家族や友達とゆっくりとした時間を過ごす)で働きます。
自律神経が乱れると、このブレーキとアクセルのバランスが取りづらくなり、集中すべき局面で集中できなかったり、不必要なタイミングで過剰な緊張を引き起こしたり、不眠や精神症状を引き起こしたりします。
ポリヴェーガル理論では自律神経の中でも副交感神経をさらに二つに分解した腹側迷走神経と背側迷走神経として定義づけて考えます。
自律神経系の三つの枝
ポリヴェーガル理論は、自律神経系が三つの主要な枝から成り立っていると考えます:
- 腹側迷走神経(Ventral Vagal Complex, VVC):
- 社会的なつながりとリラックスの状態を促進します。
- 安全を感じるときに活性化し、心拍数を低下させ、表情や肩首周りの緊張を和らげます。
- 交感神経系(Sympathetic Nervous System, SNS):
- 戦うか逃げるかの反応を制御します。
- 危険を感じたときに活性化し、心拍数を上げ、筋肉にエネルギーを供給します。
- 横隔膜より上の領域を支配します。
- 背側迷走神経(Dorsal Vagal Complex, DVC):
- 凍りつく反応を制御します。
- 極度のストレスやトラウマ時に活性化し、心拍数を劇的に低下させ、エネルギーを保存するために体をシャットダウンします。
- 適切に機能していれば消化吸収や休息時に働きます。
- 横隔膜より下の領域を支配します。
ポリヴェーガル理論の意義
この理論の革新性は、社会的なつながりと神経系の働きの関連性に注目した点にあります。ポージェス博士は、人間が安全を感じるとき、腹側迷走神経が活性化し、リラックスと社会的交流が促進されると述べています。この状態では、私たちは他者とつながりやすくなり、安心感と共感を感じやすくなります。
一方、危険を感じると交感神経系が優位になり、戦うか逃げるかの反応が引き起こされます。これが持続すると、慢性的なストレス状態に陥り、健康に悪影響を及ぼします。また、極度のストレスやトラウマに直面した場合、背側迷走神経が活性化し、凍りつく反応が起こります。これは、一種の防御メカニズムであり、生命を守るための最後の手段です。
ポリヴェーガル理論と治療法
ポリヴェーガル理論は、心理療法やトラウマ治療において重要なツールとなっています。以下のような方法で活用されています:
- セーフティーとコネクションの強化:
- 安全な環境を提供し、クライアントが安心感を持てるようにします。
- 社会的なつながりを強化することで、腹側迷走神経の活性化を促進します。
- 呼吸法やマインドフルネス:
- 深い呼吸や瞑想を通じて、交感神経系の活動を抑え、リラックス状態を促進します。
- これにより、心身のバランスを取り戻す手助けをします。
- 自分自身の身体の感覚を取り戻すアプローチが有効です。感覚が鈍くなると感情も鈍くなります。まず感覚からアプローチすることで感情や自律神経へのアプローチが可能なケースがあります。その意味で徒手施術や鍼灸施術は効果を期待できます。
- 身体的アプローチ:
- 体を動かすことで神経系の調整を図ります。
- 前述した通り体の感覚導入を促すアプローチが有効です。(徒手施術、マッサージ、鍼、灸、ストレッチ)
- 身体的な動きは、自律神経系の調整に有効であり、ストレス解消に役立ちます。
結論
ポリヴェーガル理論は、私たちの神経系がどのように感情や社会的行動に影響を与えるかを深く理解するための重要なフレームワークを提供します。安全を感じ、リラックスし、他者とつながることで、心身の健康を促進することができると示唆しています。この理論を理解することで、より効果的なストレス管理やトラウマ治療が可能となり、私たちの生活の質を向上させることができます。
ポリヴェーガル理論やさまざまな理論、学問を応用した自律神経に対する施術アプローチが大変ご好評いただいております。
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